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白い光が ただ、 恋しくて 恋しくて 愛しくて … ―



サンローズギルド員:ジェス・ウォーキン 「では、宜しくお願いしますね、レイさん。」

細かい説明を受けて、手触りのいい丈夫な羊皮紙に書かれた依頼書を受け取った。
いつも依頼の説明をしてくれる、人の良さそうな顔のギルド員の激励を背中に受けながら、少し薄暗い室内を後にする。
明るい街中に出て、改めて受け取った依頼書を開いてみた。
見慣れたいつもの共通書類。書かれているのは【収集】の依頼だ。
少し珍しい名前の植物の採取が目的。それの生える場所には、この街の周囲とは違う少しだけ強い魔物が生息しているという。

場所はあまり遠くは無いけれど、『少し強い魔物』というのが気になる。
簡単な依頼ならひとりでもこなせるけれど、万が一もありうる…。

歩き慣れた道筋を、足早に宿へと戻る。今日も穏やかなサンローズの街。
ロザ平原のなだらかな丘陵地帯と、広大なウルクヘルの森に隣接するこの街で、レイ含め旅の仲間はしばしの休息を取っている。
顔なじみになりつつあるカウンターのおばさんに挨拶をしてから、長期借りている部屋の扉を開けた。
二人部屋のこの部屋と、隣の一人部屋には、頼れる旅の仲間がいる。

「イーザ! 依頼でウルクヘルの森の奥まで行きたいんだ。手伝ってくれる?」

研究書を開いていた青年が顔を上げて、不機嫌そうな目で振り返る。

「俺は作業中だ。隣に頼め。奴は暇だろ。」

「メルにもこれから頼むんだよ。悪いけれどひとりじゃ心配なんだ。付き合ってよ」

最初に拒否をするのはいつものこと。
表面上冷たくあしらってきても、こうして頼めばしぶしぶながら付いてきてくれるのは知っている。
今回も面倒そうにため息をつきながら、読みかけの本にしおりを挟んで立ち上がってくれる。レイはそれを最後まで確認はせずに、今度は隣の部屋の扉を叩く。

「何ですか?」

こちらの住人はいつも愛想がいい。振り返って要件を問いながらも内容は予想しているのか、テーブルのティーセットを片付けはじめている。

「依頼でウルクヘルの森の奥まで行きたいんだけれど、手伝ってくれる?」

頼めば、やっぱりといった顔で相手は笑った。

「もちろんですよ。すぐに支度をしますね」

「助かるよ、メル!」




 *********




「誰だ?」


ウルクヘルの森に入って暫く。
鋭い誰何の声を上げてイーザが投げたナイフの先で、木々を揺らして何かの影が身を隠す。
続いて木々を揺らす音。素早い逃げ足に追うのは諦めて、彼はナイフを拾いに行く。

「…人間でしたね。僕達をつけて来たんでしょうか」

通常とは違う視界の中で生きているメルファには、影が魔物の一種ではなく、人間であることが分かったらしい。
気配の消えた茂みの向こうを見つめて、柳眉を曇らせた。

「お前、何かやっかいな依頼を受けたんじゃないだろうな」

ナイフを拾い上げたイーザが、胡乱な目で今回の依頼の受領主、レイを振り返る。

「そんなこと…! ギルドで受けたものだし…ジェスさんの説明だって…」

とんでもないと両手を振って否定する。
懐から依頼書を取り出して確認しても、何かおかしな点は無い。ギルド公認の印も押されている。
何度思い返しても誰かに付けられる様な覚えは無い。

「…まぁ、いい。さっさと集めて帰るぞ。」

奥に入るほどに薄暗くなるウルクヘルの森は、入り口とその付近こそ低レベルの魔物の出る普通の森だが、広大なその奥に進むほどに、普段は出くわさない強力な魔物に出会う確率も高くなる。
ここはまだほんの少し中に入った場所。
それでも既に重なり合う木々の奥には、何か得体の知れないものが潜む気配が有るような気がする。

依頼書をしまい直して、レイは再び早足で森の奥へと進む。
あと少し歩けば、目的の薬草の取れる泉が見えてくるはずだ…。




 *********




男、は、薄暗い部屋で、頭を抱えていた。
彼は低い声をブツブツと発しながら、丸めた背中を震わせている。

「…なぜ、なぜ…」

薄暗い部屋は本に埋もれ、あちこちに奇妙な器具が並んでいる。
その真ん中で、まるでそれらに埋もれるようにして、男は蹲っているのだった。



「どうして、こんなことになってしまったんだ…!!」






それは、物語の0の場所。
嘆き祈る時の過ぎた後に、螺旋の悪魔が目を覚ます。…―






―…これはいつかどこかの物語。