暗闇の中で たしかにその場所にあったものを
いったいどれほどの間 見失っていたんだろう?



遠い空の下で





白亜の城の一番高い塔の上、
白い花で覆われた空中庭園で、
青年はを見上げていました。

そこは彼の特別な場所で
彼はいつからか、そこにいることが日課になっていました。

時々は彼の幼馴染と親友も尋ねに来ましたが、
だんだんと彼が一人で来る事が多くなりました。


そこにいる間だけは、
彼は全てを忘れて、
無心になって空を眺めるのでした。



青年は迷っていました。
長い時間迷い続けていました。
それはどうにもなら無い事で、
結果も分かりきっていることでした。
それでも青年は悩むしかなかったのです





だけが過ぎました





その日も青年は塔の上にいました。
けれどその日は一人ではありませんでした。

彼の親友と、幼馴染が一緒でした。

大きな大きな満月の夜でした。
静かな月光の元で、
溢れんばかりに咲き誇る白い花
幻想的に美しい夜でした。




やがて怒声と悲鳴が庭園の花々を揺らして

柔らかな月光に輝いて

白い花が一部赤く赤く染まりました。



やがて静まり返り
月光だけが満たすその空間に

小さなが散りました。








かつて

青年がいて
彼の幼馴染がいて
彼の親友がいて

笑い声に包まれていた庭園には


誰も、いなくなりました








それは 遠い空の下で

白い花々だけが知っている

歴史の片隅にも残らない

決別の物語



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