【 水底のオルゴールは追憶の緋を奏で・8 】





 引き込まれた暗闇を抜ける一瞬、暗闇の中で誰かが小さく笑った気がした。

 銀色と燃えるような瞳の軌跡が、一瞬の残像として記憶に焼き付く。
 ……振り返る間もなく、手が離され、俺は裂け目の出口に放り出された。





「……ッ」

 浮遊感の後、両足が再び硬い地面を捉える。その確かな感触に倒れかけた身体を慌てて支えた。
 肩に触れたまま一緒についてきてしまった同行者が、聞こえる大きさで舌打ちをしたので、俺は肩をすくめる。
 振り返らなくても不機嫌なオーラがびしびしと伝わってくる。

「ご、ごめんって……。とっさに反応できなかったんだもん……」

 後ろを振り返りながらとりあえず謝ると、眇めた蒼い目で一度じろりと睨まれたけれど、それ以上は何も言われなかった。
 強い風が髪をさらい、お互いの外套がばさばさと煽られる。
 ……考えてみれば、肩掴んだまま一緒に落ちた(?)んだからイーザも人の事言えな……何でもない。心の声が伝わったわけじゃないだろうけれど目が怖い。

「また妙なことになったな……」

 とりあえず何が起きたか確かめようと周りを見ると…海だった。
 それも海岸ではなくて、遮るものの無い水平線と全方位一面の海と波と、雲と……。
 彼の見つめる視線を追い背後を振り返ると、見上げるほどのぼろぼろのマストと、汚れちぎれた元は白かっただろう帆が風に揺れていた。足元は、塗装が剥げて荒れた木の甲板。ところどころ腐り落ちて穴が開いている場所まである。

「………嘘」
「立て続けで驚く気にもなれないな」


 俺たちが立っていたのは、間違えようのない『幽霊船』の甲板だった。




「今は俺たち生身だよね…?」
「あぁ」

 軋む床をところどころの腐食に気を付けながら歩く。
 天候は完全に穏やかとは言えなかったけれど、海が渦を巻いているようには見えなかったし、嵐の気配もない。
 どうやら船は海の真ん中で動きを停めているようだった。上空の風も強いのか、白い雲が次々形を変え流れるようにして動いている。落ちる日差しに透けたぼろぼろの帆がどこか物悲しく、ばさばさと音を立てていた。
 船上には人の気配はない。


「あの『予言者』どういうつもりか知らないが、この場所に送るだけして放り投げたか」
「……さっきの、多分さ、」

 程なくして、船倉への扉を見つけた。赤錆の目立つ取っ手を握った背中に、言っていいものかと声をかける。
 肩越しに振り返った顔は怪訝そうだった。

「やっぱり気のせいかも」

 あの一瞬だから彼は気付かなかったのかもしれない。手を掴まれたのは俺だし……。
 どういう風の吹き回しかは分からないけれど、あの闇王らしき人を見かけたなんて言ったら、ただでさえややこしい事がさらに厄介になりそうで黙っていることにする。
 悪意は感じなかったし、この船に送り届けてくれたのかもしれない。……脳裏をかすめる、アルフィアでの最初の出会いに複雑な心境になるけれど、今はこの船に辿り着けた機会を生かすしかない。
 ……何かの罠か、なんて疑うのも馬鹿らしい。あの暗闇に反応できなかった時点で、殺意があれば死んでいる。

 イーザが錆びた扉を押し開けると、埃が舞い上がり、カビの匂いが鼻を突いた。
 中は真っ暗かと思ったけれど、風雨にやられた天井に穴が開いているらしく、木の廊下は逆に陽が落ちて明るく感じた。
 もちろん、ここにも人の気配はない。

 ついさっき、美しく磨かれたこの廊下をメルと歩いたのに。
 なんだか随分前の様に錯覚して胸が痛んだ。

「確か、倉庫か」
「うん。操舵室には何もなかったみたいだし、あるとしたらそっちじゃないかな」

 あちこちに穴が開いた廊下に慎重に足を踏み出すと、中の木も傷んでいるのかぎしりと床がたわんだ。ふわりと埃が舞い上がる。
 気を付けないと床が抜けて落下なんてことにもなりかねない。

 すると、音に反応したように、奥から不思議な風が抜けてきた。
 水と潮の香りを多分に含んだそれは丘のものとは違う。海の風だなと目を細めたら、普段ただ漂っている小さな住人たちが、吹き抜けずに妙に絡んでくることに気づいた。
 小さな小さな小鳥のような、綺麗に透ける羽虫のような、大小のそれらがぐるぐると囲うから、俺たちの周りでそよ風が渦を巻くようなおかしな事になる。

「……?」

 何か伝えたいんだろうか。……属性違いの彼らの言葉は囁かで聞き取りづらく、じっと目を凝らす。
 陽光だけの空間で、幻のような鱗粉をまとった彼らがくるくると回るさまは幻想的だ。ただじゃれて居るだけだろうか。この廃船に乗った人間が珍しくて。
 飛び回るそれを指先でつつこうと手を伸ばすと、

 突然、今まで人気のなかった周囲に、たくさんの人の気配を感じた。

 ぎょっとして廊下の先を確かめたけれど、所々に白い帯を落とす奥には誰もいない。ただ、風に煽られてちらちらと埃が舞うだけだ。
 けれど、なんだろう、伺うような視線を感じる。
 廃船の光景と相まって不気味なそれにぎこちなく周囲を見回していると、

「よく見ろ」

 目を細めたイーザが相変わらず無感情な声でぼそりと言ってきて、言われた通りにじっと視界を澄ます。この感じは、昔精霊を見る視界を取り戻したときの感覚に似ている。
 無いものを捉える魔力を帯びた視界は、俺たちが共通して持つ一つの特技だ。
 息を詰めながら、波と風の音しかない気配を探っていく、と、



「レイ君、ここですってば」



 カメラのピントが合うようなかちりと嵌る感覚の直後、突然目の前にひらひらとかざされた掌に、俺は驚き声にならない悲鳴を上げて尻もちをついた。
 盛大に舞い上がった埃を吸い込み咳込む。その様子を目を丸くして見ているメルと、その向こうで呆れ顔で見下ろすイーザを、俺は生理的な涙をぬぐいながら見上げた。
 纏っていた風の小精霊たちが、無言で労わるように頬をかすめていく。……優しさが胸に沁みるかもしれない。

「やっと気づいて貰えて光栄です。……何度声かけても気づかないから、駄目なのかと思いました」

 見下ろしていた彼は少し拗ねたような顔で瞳を伏せて溜息。それに謝って立ち上がる。小柄な彼の向こうには、怪訝そうにこちらを伺う他の住人たちもいた。
 さっき感じた視線の正体は彼らだったのだ。
 一度ピントが合ってしまえば、目の前で軽く腰に手を当てたメルも、奥の住人達も普通の人間にしか見えない。
 ……意識を追わなくても見えるものなのかと、なんだかとても不思議な気持ちだ。

「見えるのが不思議ですか? 僕も、最初お二人が来た時には難しいだろうと思ったんですが…とりあえず試してみたんです。
 きっと、レイ君もイーザさんも一度僕の存在に触れていますから。身体が覚えていたんですね」

 ほっとしたように目を細めて微笑む彼に、曖昧に頷くしかない。
 魔法的なモノは不思議な事はよくあることだから、あまり考えても仕方ないだろう。
 今こうして話せるのだから好都合だ。

「ところで、一体どうやってまた来たんですか? ……すぐに気づかなかったってことは、実体、ですよね?」
「うん…なんていうか、移動方法はよくわかってないんだけれどね……」

 俺の濁した答えに、メルが不思議そうに口を開きかけたけれど、そこに食い下がられたら余計なことまで言わなきゃいけなくなる。今はこうして実体で来れたのだから、早急に媒体を探さなきゃいけない。
 幸いにも船は止まっているし、嵐や渦も起きていないのだ。この隙に解除してしまえば、俺とイーザも脱出しやすい。

「そんなことより、今は媒体を探そう? 倉庫が怪……」

 俺が話を変えようとしたその矢先、ガクンッと激しい音を立てて床が跳ね上がった。
 あちこちで悲鳴が上がり、廊下で俺たちを見守っていた住人たちが膝をつく。
 俺は目の前で同じようにバランスを崩したメルを抱きとめて(触れる…!)、ぱらぱら埃と木のくずを落とす天井を見上げた。
 一度の大きな揺れの後、足元から地鳴りのような嫌な音が響いている。
 壁際に立っていたイーザがしばらく足元を見て、次に上空を見た。それを目に留めて俺も空を再度見上げる。

「空が…!」

 先ほどまで、雲が早いとはいえ晴れていた空が、俄かに黒雲になり始めていた。
 割れた天井から鋭い風が音を立てて入りだす。その風にはかなり湿気が混じっている。

「まさか、また動き出す? 幽霊船として……!」
「幽霊船、ですか」
「メル見える? 空が……」

 以前に話した様子だと、俺たちが見ている船とその周辺の姿と、メルたちが見ている様子は違っていたようだから、念のため確認してみた。

「えぇ。嵐になりそうですね。風が教えてくれています」

 俺とイーザが外部から侵入したことで、何か変化が起きたのかもしれない。
 とにかく、外がまたあの嵐と渦になってしまったら、助けは期待できなくなる。
 今のうちに媒体を探しに行かなければならない。
 ふらついて壁に預けていた身体を立て直す。振動はまだ続いていて、むしろ、少しずつ大きくなっている様だった。
 時たま、がくんと大きめに揺れてまた小さな悲鳴があがる。

 その動きを意識していると、なんとなく、なんとなくだけれど、足元が変な気がしてくる。……揺れのたびに下に沈んでいるような……?
 それに気づいたのは俺だけではなかったようで、イーザもメルもじっと床を、おそらくその下を見つめている。

「……これは進む振動じゃないな。侵入に気づいて、この船を沈める気だ」

 イーザの結論の呟きは、不気味に軋む音の中でも良く響いてしまった。直後、聞いた住人たちが悲鳴を上げてパニックになる。
 慌てて食堂や奥の部屋(たぶん客室とかだろうか?)へ走り出す人や、俺達を押しのけるようにして甲板の方へ走り出す人たち。
 その恐慌状態で床に空いた穴の方へ足を踏み出した人がいて、俺は咄嗟に止めようとしたけれど、何事もないように中空を駆けていった。
 改めて、彼らと俺の見ている風景が違うんだ思い知った。

「レイ君、急いで媒介を見つけないと、このまま船と共に沈まれたら厄介です」
「……!」

 イーザもそれを思ったのか、逃げ回る人々を避けながら走り、奥へ進んでいく。
 その後に続いて俺も駆けだした。
 外は嵐になっていて危険だけれど、今いる俺とイーザ以外は媒体が破壊できれば身体に戻れるはずだ。今は彼らの心配よりも手が届かなくなる前に結界要を探さなければ。
 もしこの船ごと深海に沈んでしまったら、捉えられたみんなを……メルを解放できなくなる。



 メルの案内で傷んだ廊下を避けながら進み、細い階段を見つけては下層に降りていく。
 階段はところどころ折れたりなくなったりしていて手間取るけれど、進むごとに水の香りが強くなってきた。
 揺れは止まらずに続いている。これだけ大型の船とはいえ、依然目にした精霊の渦がもしすでにできていれば、完全に沈むまでにそれほど長時間はかからないだろう。

 しかし、もとは大型の客船だったらしいこの船は、万が一の事故による浸水被害を防ぐためにフロア分けされた複雑な形をしていた。
 その上、メルの案内は『俺たちは通れない場所』にぶつかることも出てきて、その度に回り道を余儀なくされる。
 かつては綺麗に整った通路があったかもしれないけれど、廃船となった今では床が丸ごとなかったり、瓦礫で埋まっていたりも珍しくなかった。

「あとは、ここの階段を下りて、その正面を降りれば、倉庫です」
「……!」

 何度目かの回り道の後、彼の示した階段を見て、俺は思わず息を呑んだ。

「どうしました? また壊れていますか?」
「ううん、階段は…あるんだけれど……」

 息を呑んだ俺の前で、イーザも状況を見て眉をひそめている。


 細い階段は半ばから、澄んだ海水に沈んでいた。









「まさか水没しているとは……」



 事実を伝えた俺の言葉に、メルは困惑した顔で黙り、階下を見つめた。

 ここから下の層は長い事海水に浸っているのか、覗ける限りの場所は床や壁に藻のようなものがこびりつき、蒼くたなびいている。
 時折船全体の振動に合わせて、ごぽりと気泡が上がった。
 今も揺れながら沈み続けていて、じわじわとまだ乾いていた階段が海水に侵されていく。
 あまり時間が無い。



「くそ。やむをえないな…。来い!」
「え、ちょ……!」

 悪態をついたイーザに乱暴に襟首を掴まれ、驚いているうちに目前まで迫りだしていた水の中へ身体が投げ出された。
 水しぶきがあがり、開けていた口と目に盛大に海水が入り込む。
 突然の暴挙に慌てて息を止めた。
 ごぼごぼと音を立てて、視界で白い泡が上がる。

(何てことするんだ…!?)

 慌てて追いかけてきたメルが、驚いて襟首を掴むイーザと掴まれている俺を見ている。
 乱暴ですとか叫んでるのが聞こえる。
 やっぱり、彼はこの海水の影響は受けないのだろう。

 必死で息を止めるけれど、あんなに突然では持つはずがない。
 すぐに苦しくなってきて、襟首を掴んでいる彼の手をたたく。溺れさせる気か…!?

 けれど、

「おい、いいから息を吸え」

「!?」

 耳に届いた声に横を振り向くと、特に息を止める風でもない呆れた顔がある。
 今普通にしゃべった……?

「お前は俺の属性を何だと思ってるんだ? まぁ、『水』は専門外だ。これくらいしかできないがな」

 喋ると口元からこぽりと泡が上がった。
 水の中で声が聞こえる……。ありえない状態に、息苦しさを一瞬忘れて澄ました顔でいる相手をまじまじと見つめてしまう。
 浸水部には緩く流れがあって、彼の灰青の髪や服は水の動きに任せて揺らめいている。

 その彼の言葉にメルも納得がいったのか、心配げにこちらの顔を覗き込んでくる。

「いいから深呼吸しろ。失敗してもすぐそこに空気がある」

(失敗とか怖すぎるから!)

 急に言われても、水の中で息をするとか生まれてこの方……いや、俺の場合は記憶のある限りだけれど、そんな常識外の事なかなか出来ない。
 でももともと少ない酸素しかなかった息はとうに限界で、酸素不足で頭が朦朧とし始めたところで……俺は恐る恐る息を吸い込んだ。
(恐る恐るといっても、限界だったので思いっきり吸い込むに近い)

「……!」
「大丈夫ですか……?」

 一度俺の口の中に入っていたらしい気泡が大きく吐き出されたけれど、その後は水の外と何の変りもない。
 呼吸する口元に恐る恐る手と近づけてみる。周囲の水ごと吸い込んでいるようで、すごく不思議な感じだ。

「……凄い、便利な魔法だね……」

 声も普通に出てきた。こんな常識はずれなことができるとは思わなかった。
 俺の反応に、上手くいったとわかったのかメルもほっと息をつく。
 なんとか溺れずには済んだ。が、

「維持にだいぶかかる。溺れたくなければ短時間で済ませるしかない」

 続いた恐ろしい言葉にぎょっとした。それにはメルも胡乱な目で彼を睨んでいる。
 考えてみれば当たり前だ。イーザの魔力が途切れたらそれで魔法はお終い。つまり、俺の息もお終い。

「時間切れまでに終わらせればいいだけだ。……行くぞ」

 でもそれはイーザだって同じだ。
 俺は覚悟を決め、頷いた。




 緩やかに流れる海水は、嵐や渦を起こす精霊の近くにいるのだから澱んで濁っているかと思ったけれど、予想に反して澄み切っていた。
 船体の穴のせいか、ところどころ帯のような白い光が落ちていて、波のように揺らめいている。
 鮮やかな色をした海藻の間を、小さな魚たちが泳ぎ、突然横を通る俺たちに驚いて素早く逃げていく。

 こんな状況でなければ、その普段は見れない海の底の様子をゆっくり見ていたいのに、と、そう思った。
 
 一段階段を降り、次の階段を目指す間も、水を伝って地鳴りが届く。
 進む先の方から、またこぽこぽと白い泡が流れてきた。
 水中だからそこまで足元を気にしなくてもよくなったが、たまに開いた穴を横目で覗くと、一段暗い階下にも、色とりどりの藻やサンゴがついていた。
 群れになって泳ぐ魚たちの、どこか神秘的な光景に目を奪われる。


(水の精霊の濁り…。それでもこんなに綺麗なんだ。……どうしてこんな風に廃船とともにいるんだろう)


 そもそも、なぜ、こんな風に人の精神を捉えるような結界と共にある?
 精霊は結界を嫌う。もしかすると、この船にある『媒体』が、精霊を狂わせた原因なのかもしれない。


(…だとしたら、媒体を破壊すれば、精霊のゆがみも解消されたりする…のかな……)


 それはあまりに楽観的な話ではあるけれど、もしそうであれば良いのにと、俺は小さく胸の内で呟いた。
 かき分ける水の向こうに、遠く最後の階段が見える。





  ◆ ◆ ◆






 先へ進むレイ君とイーザさんの背中を追いながら、僕は不思議な感覚を味わっていた。
 僕の視界は綺麗に整った船内をただ歩き進んでいく光景を捉えがら、そこに重なるように、澄んだ水の気配を捉えていた。

 先ほどのレイ君の話ならば、ここは海水に水没しているはずだから、この濃厚な水の気配のほうが本物なのだろう。
 時折、レイ君が何かに気を取られる様に足を止めかける。
 その雰囲気からそれは不味いものを見たというよりも、旅の途中とても綺麗な景色を見た時とかに雰囲気が似ている。

 きっと、水没しているこの船は見慣れない海の底の美しい姿を二人には見せているに違いない。
 それを共有できないのは少しだけ悔しかった。



 そしてふと、本当にこんな単純な事実のはずだったのに、今頃気が付いた。


「レイ君……」

 思わず足が止まってしまい、口から意味のない呼びかけがこぼれた。

「ん?」

 けれど、前を歩いていた彼はきちんと聞き取ってくれて、振り返る。

 それにぎゅっと胸が痛んだ。
 これは、強い『不安』だ。
 絶対気づいているのに、彼も、その前を行くイーザさんもあえて口に出さなかった。
 ただ真っすぐに、結界媒体があるだろう船倉に向かっている。



 この奥に媒体があったとして、それを壊せば、ここの住人は解放される。
 恐らく瞬時に精神は解き放たれて、元の身体に戻るだろう。




 生身でここにいる、お二人だけを船に残して。





 結界から解き放たれたら、僕はすぐにでも、この船を見つけなければいけない。
 何をしてでも、何としてでも。
 ぐっと手を握りしめる。

「僕は意識が戻ったら、すぐに、迎えに来ますから」

 僕の言葉に、一度レイ君は目を丸くして驚いた様子だった。
 先を行くイーザさんも目だけでこちらを振り返っているのが分かる。


 ややあって、レイ君が僕が大好きな柔らかい笑顔を浮かべて、答えてくれた。


「うん。待ってるから、宜しくね、メル」




 二人が僕を助けて、そしたら次に、僕が二人を助けに来る。

 必ず。 




>> 9につづく >>


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